交通地理学の学界展望(2001年)

はじめに・学界展望とは?

世界には様々な学問(学び)の世界があります。これを「学界」といいます。その中のある程度、同じ学問を修めた人々がまとまって”学会”を成立させます。

学会は、学問や研究の従事者らが、自己の研究成果を公開発表し、その科学的妥当性をオープンな場で検討論議する場であります。

この学界の1年間の展望をまとめたものが学界展望になります。

地理学界では、人文地理学会の会誌『人文地理』において学界展望を掲載しています。

 会誌『人文地理』では,毎年第3号に「学界展望」を掲載しています。これは前年における人文地理学の動向を分野ごとにレビューするもので,他誌にはない特徴として好評を得ています。第59巻(2007)からは,「学界展望」で紹介した文献のリストを公開しています。

 - 「学界展望」文献リスト « 一般社団法人 人文地理学会

 

この学界展望に登場する論文をリスト化,筆者のコメントを簡潔にまとめなおしたものが本記事になります。

 

 交通地理学の学界展望・2001年

執筆者情報

淡野 明彦(たんの あきひこ)

所属:奈良教育大学教育学部社会化教育講座教授

学位:理学博士 - 筑波大学,理学修士 - 東京教育大学

分野:地理教育,観光地理学,交通地理学

淡野 明彦 (Akihiko Tanno) - マイポータル - researchmap

 

  学界展望情報

人文地理における交通地理学の分類:交通・観光

人文地理における学界展望掲載巻号:54巻3号(2002年)

付記:この年は取り上げるべき成果が少なく,交通分野は分類中の2割程度.

 

 学界展望文献目録

交通に関してとりあげるべき成果は少ない.

 

稲垣稜(2001):名古屋大都市圏外部郊外における通勤流動の変化‐岐阜県御嵩町を事例に.人文地理,53-1.

 日本のの大都市圏構造の変化に関する議論では,郊外,なかでもより内側の地域 (いわゆる「内部郊外」) における,中心都市通勤率の低下やホワイトカラー雇用の増加が指摘されている.「内部郊外」とよばれる地域の雇用成長の実態の解明には,「外部郊外」に居住する人々の動向に着目する必要があると考え,外部郊外に居住する人々の側から,通勤流動の変化,中でも内部郊外への通勤者数の増加がいかなる性,コーホートの人々によってもたらされたのかを明らかにし,その上でこうした人々の就業地・居住地関係の変化を考察.

 郊外核の成長や大都市の多核化など大都市圏構造の変化に関する議論のなかで,今後さらに使用される用語の共通的な定義やデータの扱いを含めた分析方法の精緻化を図るべき研究分野である.

 

石澤孝(2001):北陸地方における高速道路網の整備と都市間連携.運輸と経済,61-11

 高速交通網が整備された場合に地域内の都市間連携にいかなる波及効果がみられるかについて,上信越自動車道によって連結された北陸地方を事例として考察.都市間連携を捉える観点として,ビジネス的性格が強いとされる高速バス網の連携関係を検討している.高速交通網の整備とともに,主要都市間を連絡する高速バス網が拡大し,都市間連携の強化に道路環境の整備が大きく貢献し,地域間交流関係が大きく拡がったことが明らかに.

 東名や名神といった幹線高速道路の開通以降に,インパクスタディとよばれるこの種の研究が多く発表されたが,いまだに方法論的な吟味に欠けるきらいがあり,大都市部で深刻な状況にある道路の環境アセスメント問題をも含めて,議論の活発化に期待したい.

 

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