交通地理学の学界展望(2003年)
はじめに・学界展望とは?
世界には様々な学問(学び)の世界があります。これを「学界」といいます。その中のある程度、同じ学問を修めた人々がまとまって”学会”を成立させます。
学会は、学問や研究の従事者らが、自己の研究成果を公開発表し、その科学的妥当性をオープンな場で検討論議する場であります。
この学界の1年間の展望をまとめたものが学界展望になります。
地理学界では、人文地理学会の会誌『人文地理』において学界展望を掲載しています。
会誌『人文地理』では,毎年第3号に「学界展望」を掲載しています。これは前年における人文地理学の動向を分野ごとにレビューするもので,他誌にはない特徴として好評を得ています。第59巻(2007)からは,「学界展望」で紹介した文献のリストを公開しています。
この学界展望に登場する論文をリスト化,筆者のコメントを簡潔にまとめなおしたものが本記事になります。
交通地理学の学界展望・2003年
執筆者情報
小松原 尚(こまつばら ひさし)
分野:観光地理学,経済地理学
小松原 尚 (Hisashi Komatsubara) - マイポータル - researchmap
学界展望情報
人文地理における交通地理学の分類:交通・観光
人文地理における学界展望掲載巻号:56巻3号(2004年)
付記:特記なし
学界展望文献目録
サービス経済の進展に伴い,交通や観光の国民経済に果たす役割は一段と重要になっている.そのような状況を反映して,当該分野に関する人文地理学的研究成果も多数みられる.それらを
(1)都市の形成や機能との関連から論じたもの
(2)地域間ネットワークの形成に関するもの
(3)景観・環境と観光開発に関わるもの
に分けて,それぞれの研究動向を展望してみることにする.
→ 交通に関連する部分のみ抜粋
- 都市の形成や機能との関連
三木理史(2003):『水の都と都市交通-大阪の20世紀- (近代日本交通史9)』成山堂書店.
鉄道の都市形成に果たした役割に関する一連の歴史分析の研究が結実
松田敦志(2003):戦前期における郊外住宅開発と私鉄の戦略 - 大阪電気軌道を事例として.人文地理,55-5.
三橋浩志(2003):公共交通による歩いて楽しい中心商業地づくり.地理,48-4.
現状分析の実施
奥平理(2003):カナダ・ハリファクス港におけるウォーターフロント開発の現状と課題.地域地理研究,8.
輸送手段の変化にともなう港湾の再開発と都市整備との関連を追究
- 地域間ネットワーク分析
葛西大和(2003):近代の交通革命.『人とモノと道と・いくつもの日本III』岩波書店.
歴史的観点から,時間距離の短縮が地域の形成に及ぼした点を研究
阿部史郎(2003):工場立地条件としての高速道路の再評価 ‐ 首都圏周辺地域の事例から.経済地理学年報,49-1.
高速道網の整備に伴う工場立地の変化を分析
横山昭市(2003):上越地方の温泉地とリゾート開発地の変容と課題.愛媛大・人文学論叢,5.
上越新幹線の開通後の新潟・群馬の県境地帯の温泉地の変貌をまとめている
奥野一生(2003):『日本の離島と高速船交通』竹林堂.
本宮卓(2003):しまなみ海道開通に伴う地域社会の変容.地域地理研究,8.
離島地域の発展と交通との関連について論じられている.
溝尾良隆(2003):『観光学-基本と実践-』古今書院.
観光地の発展にとって市場との交通アクセスが重要な意味を持つことを指摘.
「地理」(48-2) では「特集/バス交通とくらし」を組み,鈴木文彦,大島登志彦,中牧崇,遠藤広正が興味深い論点を提起し,交通サービスの拡大の地域差にも関心がはらわれている.
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